2022年大会が開催されました
2022年度共生社会システム学会大会は,2022年9月17日(土曜)に東京大学にて開催されました。
一昨年,昨年に引き続き,新型コロナウイルスの感染拡大を受けてオンライン上での実施になりました。
・プログラム
午前中 個別報告,会員企画ワークショップ
12:00~12:50 理事会
13:00~13:45 総会
14:00~17:50 シンポジウム
・シンポジウムのテーマ「変質する資本主義と共生社会形成の担い手」
―世界経済、環境・農業・協同の位相変化と地域再生への課題―
第1報告:変質する現代資本主義の行方 ―構造変化と環境・資源・格差問題の動向―
報告者:諸富徹(京都大学)
コメンテイター:市原あかね(金沢大学)
第2報告 新自由主義的食料安全保障の破綻とパラダイム転換 -世界農業化路線から国民的農業路線へ-
報告者: 磯田宏(九州大学)
コメンテイター:秋山満(宇都宮大学)
第3報告 共生社会システムに向けた「担い手」の広がりと連携課題 -協同組合セクター、アソシエーション、社会的連帯経済-
報告者: 田中夏子(長野県高齢者生活協同組合理事長・協同総合研究所理事)
コメンテイター:武谷嘉之(大阪樟蔭女子大学(非))
(企画主旨)
21世紀に入り、同時多発テロ(2001年)、世界金融危機(リーマンショック,2008年)、東日本大震災(原発災禍を含む,2011年)、コロナ危機(2020~)、ウクライナ危機(2022~)、激震と呼ぶべき事態が続いてきた。従来の枠組みが大きく揺らぎ出しており、私たちは将来を見通しがたい時代に入りつつあるかにみえる。
本学会ではこの2年間、「ポスト新自由主義のビジョン」をテーマに、パンデミックから見える世界(2020年)、コロナ禍後の社会と共生(2021年)とシンポジウムを企画してきた。この間、上記の深刻な事態を受けて、資本主義自体の変質や問い直しが急浮上している。岸田政権が唐突に「新しい資本主義」を掲げたのだが、内実が見えない絵空事のような印象を与えている。改めて「変質する資本主義」の見極めが重要であり、ポスト新自由主義時代の展望を探るには、時代の仕切り直し的な分析視点が求められている。
今年度のシンポジウムでは、大きく3つの柱立てで構成される。
第1報告では、大きなマクロ的視点から資本主義の変質状況にメスをいれる。産業資本主義時代は終わり、資本主義の駆動力が従来のハードな産業資本から無形資産に移行してきた。資本主義経済の非物質主義的な展開について、脱炭素化対応(環境)、格差(デジタル経済化)、社会的投資・人的投資に関して、日本の問題点と課題などが提示される。(第1報告は、全体状況分析として特別報告の位置づけ)
第2報告では、従来の経済のグローバル化状況が大きく揺らぎだす時代の中で、日本社会を支える根幹にあった食料安全保障の体制が次第に変質してきている。そうした状況に関して、その背景や課題、展望についてとくに食料・農業政策を中心にして、日本社会や経済のあり方への問題提示がなされる。
第3報告では、変質する資本主義における対抗セクターとしての協同組合セクター、アソシエーション、社会的連帯経済の内外の動向が概観される。さらに超高齢化や地域衰退が懸念されている日本に関して、共生社会システムの「担い手」の広がりという視点からも現状や諸課題について課題提示される。
短時間のシンポジウムなので、大テーマを十分に掘り下げる余裕はないものの、混迷と矛盾が極まるかに見える現在の資本主義社会について、まずはその変質状況を浮かび上がらせたい。そして、共生社会に向かうための転換の契機をどこに見出すか、どのような担い手が求められるか、その手がかりについて、報告者、コメンテイター、そして参加者と共に議論していきたい。
・個別報告は10件の発表があり,会員企画ワークショップとして,「ロヒンギャ難民・デイアスポラの『今』とGeosymbiosis / 地球共生に向けた国際社会の在り方」(代表:白鳥武(摂南大学))が開かれました。個別報告・企画ワークショッププログラムはこちらです。
・大会に合わせて理事会と学会総会が開催され,今回改選となる新理事・監事の方々が推薦・承認されました。
・今大会は,オンライン形式ではありましたが,特に多数の非会員の参加があり,盛況のうちに終えることができました。